超音波、動脈硬化、心電図などの複合器

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ポータブル ホルタ型 動脈硬化計測

2013年4月28日日曜日

慢心が危機を覆い隠す―退路を断った日本の行方

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■01■記者コラム       「慢心が危機を覆い隠す―退路を断った日本の行方」       経済部デスク/岡田 豊 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   「\10,456」。私の通帳に振り込まれた金額。今年3月、10年の満期   を迎えた個人向け国債1万円分とその利子だ。   2003年3月、財務省が、増発する国債の引き受け手を増やそうと、個   人向け国債を発売した。将来の財政悪化を見越し、国民にも買って   もらおうという発想。そんな“不純”な動機を知りながら、当時の取材の   流れの中で試しに購入した。   1万円は無事戻ってきたが、利子はたったの456円。10年の変動型で   初回の金利は0・09%。如何せん、金利が低すぎる。日本の家計の   受取利子は、ピークの1991年度に38・5兆円に達したが、その後の   金利低下で2002年度は4・7兆円に落ち込み、ゼロ金利のいまも   推して知るべし。高齢者は利子所得が激減し、特に厳しい。   企業は低金利の恩恵に浴してきた。なのに経済再生を主導できない   でいる。淘汰され再出発すべき“死に体”の企業は低金利で生き永ら   えている。金利は、経済活動を正常化し、公平にただす。所得配分と   企業の新陳代謝を促す重要な機能を持つ。だが、いまは役に立たず、   構造改革を妨げている。正常な金利を取り戻せる日はいつなのか。   4月4日は歴史的な日として刻まれるだろう。日銀が金融政策決定   会合で金融緩和を強化する方針を決めた。デフレ脱却のために安倍   晋三総理大臣が求める「2%の物価上昇」を目指し、アベノミクスの   1本目の矢「大胆な金融緩和」を放った。「これまでとは次元の異なる   金融緩和であります」。黒田東彦総裁はこう言って見せた。   「日銀が戦後初めてレジームチェンジ(体制転換)を果たし、FRB(米   連邦準備制度理事会)型の中央銀行になろうとしている。黒田総裁   はバーナンキ(FRB議長)のようになれるかもしれない」(外資系証券   幹部)。アメリカで大統領に次ぐ権力者とも称されるFRB議長にたとえ   られた黒田総裁。日銀を見る目は変わった。   市場の空気も変わった。日銀の決定直後から円安が進み、株価は急   上昇した。「来年にかけて日経平均は2万円の大台に乗るかもしれ   ない」。こんな強気な見方も証券関係者から出る。楽観論が広がり   始めたと感じる。   「市場はいい反応をしているのに、どうしてアベノミクスを批判するのか」。   取材先からこんな議論も投げかけられる。バブル崩壊以降、20年続く   長いトンネル。絶好のチャンスがやっと訪れた。アベノミクスへの期待   は無理もない。   うまく行けばそれでいい。しかし、“異次元”の金融緩和は“劇薬”でも   ある。使い方を間違えば、日本経済は底が抜ける可能性が高い。   いま、アベノミクスで一番懸念されるのは慢心だ。想定される危機   から目をそらしてはならない。慢心が広がれば、目の前の危機を覆い   隠してしまう。   “異次元”緩和という大実験の前途は険しい。国債や、上場投資信託   などリスク資産を大きく買い増し、市場への資金供給量を2年で2倍に   するという。これまでの量的緩和は、金融機関が日銀に預ける当座   預金ばかりが増え、思うように市場に出回らなかった。   黒田総裁はどうするのか。4日の会見ではこの疑問に解を出さなかっ   た。「供給量を何倍にしようがカネが市中に出回るようにしなければ、   掛け声に終わる」(市場関係者)。   市中への資金供給を焦るあまり、企業に一定規模の融資をするよう   金融機関に強制するような仕組みをつくれば、新たな危機が生まれる。   将来性がない企業をいたずらに延命させ、金融機関の不良債権を   増大させてしまう。   市中の資金量をうまく増やせたとしても、実体が伴わないバブルが膨   らむ懸念がある。不動産や株式を保有する企業や金持ちにはメリット   はあるが、バブルが、生活必需品などの物価高に拍車をかければ、   資産を持たない低所得層の負担は増える。既に去年からの円安で   輸入物価が上昇し、食品やガソリンなどが値上がりしている。   「経済が活性化し賃金が増える前に、輸入価格が上がり、消費に   ダメージを与える。アベノミクスは景気を回復させるのではなく、消費   減速が主導する形で景気を悪化させる方向に働くのではないか」。   幅広い情報収集と深い分析で知られる国内有数のエコノミスト、   中前忠氏は、いまのアベノミクスに批判的だ。   最悪のシナリオは国債の暴落、そして財政破綻だ。金利は底を打っ   た後、将来のインフレ期待を背景に上昇を始めるだろう。目標の物価   上昇2%を達成した後にどうなるか。金利が上がりすぎれば国債価格   が下落し、国債を大量に保有する金融機関にダメージを与える。   「2ポイントのリスクプレミアムが発生し、長期金利が5%まで上昇する   と、自己資本不足に陥る金融機関が増え、金融システムは危機的   様相になる」。   BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏は好シナリオが   崩れた場合、金融危機に陥る可能性があると指摘する。金融危機を   封じ込めるため公的資金を大量投入すれば、財政が一層悪化、国債   暴落の引き金になる恐れがあると、河野氏は警告する。   政治家に慢心はないか。デフレ克服は金融緩和だけでできるほど甘   くはない。副作用を最小限に抑え込むためにも急務なのが、アベノ   ミクス3本目の矢の「経済成長戦略」だ。   構造改革を促し、企業が投資しやすい環境を創り、需要を生み、実体   経済を改善して経済成長を軌道に乗せる。政府にとって最重要の政   策だ。「血がドクドク出るような構造改革をしないと再生はない」(霞が   関関係者)。しかし、安倍政権の動きは鈍い。   成長戦略の柱になる規制改革は参院選前の6月にまとめる段取りだ   が、「内容は濃くならないだろう」(霞が関筋)とみられている。   「参院選後は本格的にやるのではないか」。安倍総理を支える自民   党幹部はこう言う。選挙を心配して踏み込んだ規制改革は後回しに   する腹らしい。日銀は本腰を入れた。政府は財政出動を手当てしたが、   負担するのは借金を付け回された将来世代だ。政治家が自ら汗を   かき、血を流す改革に踏み込むのは、いつなのか。   業界の利害が絡む規制改革は生半可ではできない。しかし、社会の   仕組みを一変させるような改革を進めないと、さび付いた実体経済は   動き出さない。各省庁ごとに千規模の単位で改革案を出させ、国民   からも改革案を募る公募を本気でやってみたらどうだろうか。   「日本は退路を断ったのだ。失敗すれば最悪、“焼け野原”になる」。   大手証券の幹部は、日銀の決定の意味合いをこう見る。この大胆な   金融緩和は動き出せば簡単に修正できず、後戻りができなくなる。   しかも、成功する確率が低い賭けなのだと。デフレから脱却できても、   過度の金利上昇を食い止められなければ最悪、財政破たんする恐れ   があるという。   「X-dayプロジェクト」。一昨年6月、自民党の部会が水面下でまとめ   た報告書がある。「万が一、国債価格が短期間で大幅に下落し、更   に市場関係者の動揺が収まらない状況になったような場合…」。   国債暴落を想定した緊急対策を緊張感ある言葉で綴っている。当時   の民主党政権を牽制する狙いもあったが、極めて異例の報告書だ。   さらに次のように踏み込む。「(国債暴落の際は)関係閣僚と日銀総   裁が緊急対策本部を立ち上げ、思い切った対応を機動的にとらなけ   ればならない。社会保障の削減や思い切った増税も含めて国民経済   に極めて大きな影響を与えることを覚悟しなければならない」。   国の借金は今年3月末で1000兆円を突破したとみられる。GDP比で   みると先進国で最悪の財政状態。ギリシャより悪い。日本人は実に   金にだらしないということか。経済再生ができないまま、借金を重ねる   ようだと、自民党が想定した「X-day」は現実となるだろう。残された   時間は、あまりない。  ≪追記≫   「デフレだ、インフレだ」「景気が良い、悪い」という定義づけに、どこ   まで意味があるのかと最近、考える。この金融緩和によって、一部の   金持ちや企業はマネーの恩恵を受けるだろう。やがて日本経済全体   がデフレ脱却を果たしたとしても、低所得者に波及せず、大勢の人を   置き去りにする心配がある。そんな状態でも成功と言うのだろうか。   非正規雇用者が増えている。中間層の代名詞とも言える製造業の   就業者が1000万人を割り込んだ。格差はさらに拡大していくだろう。   弱い人にマイナスを背負わせても、一部の強い人が持つプラスに   よって、全体が差し引きプラスになれば、「経済が改善した」と言う。   「1つの全体の数字」に押し込めるやり方だけでいいのだろうか。   すべての人の、すべての営みのことを『経済』と呼ぶのではなかった   だろうか。

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